西宮湯川記念賞受賞者(第1回~第10回)

更新日:2018年3月27日

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所属・肩書は受賞当時のものです。

第1回(1986年)米谷(よねや) 民明(たみあき) 氏

贈呈式年月日

1986(昭和61)年11月9日

受賞者

米谷 民明 氏(東京大学教養学部 助教授)

米谷氏

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受賞研究

弦理論に基づく量子重力の研究

受賞理由

 湯川博士の中間子論導入によって開かれた素粒子物理学は、今世紀後半に至って大きく進歩した。すなわち原子核を構成する陽子、中間子及びその間の力を媒介する湯川中間子などハドロンとよばれる素粒子は、より基本的要素クォークとそれらの間に介在するゲージ場とから構成され、かつこれらハドロンの衝突などにおいては、上記要素があたかも弦によって相互に連結されているように振る舞うことが分かってきた。
 それと同時にこのような対象を取り扱う理論的枠組み=双対弦模型というものが見出されていたが、米谷氏の研究は,氏が北海道大学大学院生のときに行ったもので、双対弦模型がアインシュタインの重力理論をも含みうることを示し、従来の理論の持つ意義を大きく転換したものである。
 現在、すべての素粒子を統一して理解するための大変有望な理論として、超弦理論という研究が世界中で精力的に進められているが、米谷氏の業績は、このような研究動向の端緒を拓いたもので、国際的にも高く評価されている。
その後も米谷氏は、素粒子物理学の中心的課題にとりくみ、着々と成果をあげ、氏の今後の活躍についても大きな期待がもてる。

第2回(1987年)氷上(ひかみ) 忍(しのぶ) 氏

贈呈式年月日

1987(昭和62)年11月9日

受賞者

氷上 忍 氏(東京大学教養学部 助教授)
氷上氏
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受賞研究

アンダーソン局在へのくりこみ群の応用

受賞理由

 金属など固体内電子の波としての振る舞いが電気抵抗に対する磁場の影響を通して明確にとらえられることや、場の理論(くりこみ群)が有効であることなどを示した。
 この理論は、実験的研究によって見事に実証され、アンダーソン局在効果の研究が飛躍的に発展する契機となった。

第3回(1988年)柳田(やなぎだ) 勉(つとむ) 氏

贈呈式年月日

1988(昭和63)年11月12日

受賞者

柳田 勉 氏(東北大学理学部 助教授)
柳田氏
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受賞研究

ニュートリノ質量と統一理論

受賞理由

 1979年柳田氏は、素粒子の統一理論におけるニュートリノの微少質量を「シー・ソー」機構という考えで説明した。
 これが素粒子および宇宙物理学に与えたインパクトは非常に大きく、その業績は国際的にも高く評価できる。

第4回(1989年)小貫(おぬき) 明(あきら) 氏

贈呈式年月日

1989(平成元)年10月28日

受賞者

小貫 明 氏(京都大学基礎物理学研究所 助教授)
小貫氏
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受賞研究

複合液体の動的理論 (Dynamical Theory of Complex Fluids)

受賞理由

 溶液、高分子液体、ゲル等いわゆる“柔らかい物質”の非平衡現象の理論的研究の開拓者の一人として高く評価された。
 特に良く知られている研究は、流れの下での、溶液や高分子液体の臨界現象における特異性についての理論的予言であり、前者については実験的にも検証された。
 また、高分子のゲルの体積相転移やそれに付随して現われるパターン(しわ)に関する優れた研究、液体ヘリウムの超流動への相転移に及ぼす熱流の効果についての理論などによって実験家に強い刺激を与えた。 

第5回(1990年)加藤(かとう) 光裕(みつひろ) 氏 小川(おがわ) 格(かく) 氏 中村(なかむら) 卓史(たかし) 氏

贈呈式年月日

1990(平成2)年10月27日

受賞者 ※5周年記念により、受賞件数2件

加藤 光裕 氏(高エネルギー物理学研究所物理研究部物理 第1研究系助手)
小川 格 氏(東京大学理学部 助手)
加藤氏、小川氏
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受賞研究

弦理論の共変的量子化

受賞理由

 弦理論は重力を含む素粒子の“究極”の統一理論として最も有望視されている模型であり、現在世界的に精力的な研究が続けられている。 加藤・小川両氏は、ゲージ場の共変的量子化の手法であるBRST形式と呼ばれる演算子法を弦理論に適用することによって、このメカニズムを明確な形(BRST生成子のべき零性の破れとその回復)に表現することに成功し、弦理論の共変的定式化への新しい道を開いた。
 この共変的量子化法は、最近の弦理論の急速な発展の中で、その基本的な重要性が認識されている。特に、この方法に基づく弦の共変的量子場の理論の構成に関して、注目すべき新展開がなされ、この方面の弦理論の発展に大きな貢献をなし、国際的にも高く評価されている。

受賞者 ※5周年記念により、受賞件数2件

中村 卓史 氏(京都大学基礎物理学研究所 教授)
中村氏
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受賞研究

数値的一般相対論

受賞理由

 宇宙の運動を基本的に支配している力は重力である。宇宙物理学的に興味深い激しい天体現象は重力の強い系である。星がその進化の最後に超新星を起こし、中性子星やブラックホールが形成される現象などはその例である。
 これらの現象を解明するには、すべてを一般相対論的に取り扱わなければならない。しかし非線形テンシル偏微分方程式であるアインシュタイン方程式を、このような複雑な系で解析的に計算することはおよそ不可能である。
 中村氏はこの10年、電子計算機を駆使して数値的にそれを解き、従来不可能であったこのような現象の定量的な研究を進めてきた。今日このような方法は「数値的一般相対論」(Numerical Relativity)と呼ばれているが、中村氏はこの分野の形成に絶大な貢献をなし、世界的にも高く評価されている。 

第6回(1991年)大塚(おおつか) 孝治(たかはる) 氏

贈呈式年月日

1991(平成3)年10月26日

受賞者

大塚 孝治 氏(東京大学理学部 助教授)
大塚氏
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受賞研究

相互作用するボゾン模型による原子核の集団運動の研究

受賞理由

 原子核は多数の陽子と中性子から成る多体系で、球形または楕円体形の形が振動や回転をして集団運動を行う。ボーアとモッテルソンは形の変形に基礎をおく幾何学的模型によりこの集団運動を説明してきたが、これと少し違う観点から、スピン・パリティ0+と2+のボソンから集団運動が組立てられているという、相互作用するボゾン模型が有馬とヤケロにより提唱された。 この模型は幾何学的模型にない長所をもち実験データをよく再現するが、現象論的模型なので、限界がある。大塚氏は原子核の殻模型から出発して相互作用するボゾン模型の基礎付けを行い、中性子陽子の自由度を導入してボゾン模型を更に発展させた。この模型は多くの実験データの解析に応用され、また色々の集団運動のモードにも拡張され大きな成果をあげた。
 大塚氏の研究は原子核の集団運動の研究の発展に絶大な貢献をし国際的にも高く評価されている。 

第7回(1992年)金子(かねこ) 邦彦(くにひこ) 氏

贈呈式年月日

1992(平成4)年11月21日

受賞者

金子 邦彦 氏(東京大学教養学部 助教授)
金子氏
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受賞研究

結合写像格子の導入による時空カオスの研究

受賞理由

 自然の運動には、地球や月の運動のように幾千年も前から予測可能な運動と、天気を決める大気の運動のように予測困難な運動とがある。最近、非線形力学系や熱平衡から十分に離れた非平衡開放系は、殆どすべてが予測不可能な非周期運動(カオス)を示すことが判明し、このカオスの構造の解明が重要な課題となっている。
 金子氏は、空間的に一様でない流体や化学反応系などで起こり得る時間的、空間的に複雑なパターン、すなわち、時空カオスを研究するモデルとして、1984年に、空間格子点の上に低次元写像を置き相互作用させた結合写像格子を提案し、いくつかの新しい時空パターンを発見した。
 これらの時空パターンは流体や液晶で実証され、国際的にも高く評価されている。しかも現在、時空カオスの研究が重要な課題となり、金子氏の結合写像格子はその強力な現象論的方法として広く使われている。 

第8回(1993年)筒井(つつい) 泉(いずみ) 氏 原田(はらだ) 恒司(こうじ) 氏

贈呈式年月日

1993(平成5)年10月28日

受賞者

筒井 泉 氏(アイルランド・ダブリン高等学術研究所研究員)
原田 恒司 氏(九州大学理学部 助手)
筒井氏、原田氏
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受賞研究

量子異常を含むゲージ理論の量子論

受賞理由

 自然界に存在する四つの基本的な力である、強い力・電磁気力・弱い力・重力はすべてゲージ理論を用いて記述できる。我々の時空での物理法則は、ある角度だけ回転した座標系から見ても同じであり、これを回転対称性という。これと同様にゲージ理論には、ゲージ変換を施しても理論が変わらないというゲージ対称性がある。しかし、量子力学に従って、ゲージ理論を量子化すると、物質場の種類によっては量子化する際にゲージ対称性を保つことが不可能になる。これを量子異常という。ゲージ対称性に量子異常が生じると、意味のある量子論を作ることができないというのが従来の通説であった。
 これに対して、原田・筒井両氏は1987年に、柔軟性に富んだ経路積分量子化法を用いることによって、ゲージ理論が量子異常を含んでいても矛盾なく量子化できることを具体的に示した。原田・筒井両氏の研究はゲージ理論についての日本の若手研究者の独創的研究の一つとして、国際的にも高く評価されている。

第9回(1994年)阿久津(あくつ) 泰広(やすひろ) 氏 出口(でぐち) 哲生(てつお) 氏

贈呈式年月日

1994(平成6)年10月29日

受賞者

阿久津 泰広 氏(大阪大学理学部 教授)
出口 哲生 氏(お茶の水女子大学 助教授)
阿久津氏、出口氏
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受賞研究

可解統計力学模型に基づく結び目理論

受賞理由

 阿久津泰広、出口哲生の両氏は、可解統計力学模型から結び目・絡み目の位相不変量である絡み目多項式を構成する研究において、数々の画期的な業績をあげた。 特にリー超代数に付随した絡み目多項式、ひもごとに異なる変数をもたせ多変数絡み目不変量、の構成を明らかにした両氏の共同研究は、国際的に高い評価を得ている。
 数学における永年の難問である結び目・絡み目理論が、統計力学における手法によって飛躍的に進歩したことはまさに驚くべき進展であり、両氏の研究は理論物理学のみならず位相幾何学の発展に大きな貢献を行った。 

第10回(1995年)永長(ながおさ) 直人(なおと) 氏

贈呈式年月日

1995(平成7)年11月1日

受賞者

永長 直人 氏(東京大学大学院工学系研究科 助教授)
永長氏
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受賞研究

強相関電子系のゲージ場理論

受賞理由

 強く相互作用をしながら運動する固体内の電子系(強相関電子系)の問題は現代物性物理における中心的な課題であり、モット転移、その近傍の異常な金属状態、高温超伝導を代表とする顕著な諸現象が精力的に研究されている。
 永長氏はこの問題に対して、共同研究者である米国のP.A.Lee教授とともに、実験データを矛盾なく説明し得るモデルとしてスピンと電荷をそれぞれ担う二種の粒子(スピノンとホロン)がゲージ場を介して相互作用するというモデルを提唱し、その物理的な性質を詳細に検討した。
 この仕事は初めてスピン-電荷分離がどのように実際の現象に現われるかを具体的に示し、温度に比例する電気抵抗などのいくつかの特異な性質を見事に説明した。 さらに格子ゲージ理論の手法やインスタントン理論を駆使し、大きなフェルミ面の存在からくる散逸(摩擦)の効果がスピンと電荷の分離を安定化することを見いだした。このように永長氏はゲージ理論が物性理論において強力な方法論を与えることを具体的に示すとともに、物性論を素粒子論の間の交流に大きな寄与をなした。
 このゲージ場理論は量子ホール系、特に偶数分母のフェルミ流体的量子ホール系の理論、ランダムなゲージ場中の電子の運動等の広い範囲の問題にも波及、発展している。

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