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「第40回 西宮湯川記念賞受賞者」が決定しました

更新日:2025年10月21日

ページ番号:58691552

野海 俊文(のうみ としふみ)氏、第40回 西宮湯川記念賞を受賞

 西宮市では、理論物理学分野における研究者を奨励するため、若手研究者(40歳未満)の顕著な研究業績に対して、西宮湯川記念賞を贈呈しています。
 今年度は、全国から15件の推薦があり、西宮湯川記念賞選考委員会(委員長:村上 修一 東京大学大学院工学系研究科・教授)および西宮湯川記念事業運営委員会(委員長:大野木 哲也 大阪大学大学院理学研究科・教授)での審査の結果、野海 俊文 氏が受賞者に選ばれました。
 今年度の西宮湯川記念賞贈呈式は、西宮市制100周年 西宮湯川記念事業40周年を記念して、令和7年12月6日(土曜日)13時から西宮市民会館アミティ・ベイコムホールで行われます。
 なお、贈呈式は「西宮湯川記念科学セミナー」とあわせて実施し、市民の皆様にもご参加いただけます。
 贈呈式・科学セミナーへの参加をご希望される方は、 事前のお申込み(11月14日必着)が必要です。

開催概要・申込方法などの詳細は、「令和7年度 西宮湯川記念科学セミナー申込等ページ」新規ウインドウで開きます。をご覧ください。

【受賞者】

野海 俊文(のうみ としふみ)氏

東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 准教授

受賞者お写真

(受賞者写真の無断使用を禁じます)


【受賞研究】

「宇宙論的加速器物理学の開拓」

【受賞理由】

 素粒子物理学の標準模型は、既知の素粒子の相互作用を記述する理論であるが、宇宙初期の超高エネルギー領域の現象を記述するには不十分であると考えられている。地上加速器で到達できるエネルギーには限界があり、素粒子大統一理論や超弦理論が予言する領域を実験的に探求することは困難を伴う。一方、初期宇宙の加速膨張であるインフレーションは、地上加速器では到達できないエネルギー領域で発生したと考えられ、超高エネルギー物理学の重要な実験場となりうる。標準模型を超える未知の素粒子の情報はインフレーションに由来する原始宇宙の密度ゆらぎに刻まれており、これを観測して超高エネルギー領域の物理法則の知見を得られないであろうか。
 この問いに、野海氏はインフレーション時空の対称性を用いた有効場の理論の方法で挑み、インフレーションのエネルギー領域と同程度の質量を持つ未知の素粒子の相互作用のパターンを同定し、それを観測によって決定する方法を初めて発見した。特に、その相互作用が宇宙マイクロ波背景放射などで測定される原始宇宙の密度ゆらぎの3点相関に与える影響を分析し、特有の振動パターンから未知の素粒子の質量を決定できることを示した。これは、地上加速器実験において素粒子の質量を決定するために用いられる手法と対応しており、宇宙観測によって未知の素粒子の特性を調べる可能性を拓くものである。
 野海氏は、インフレーションを超高エネルギー加速器と見なす画期的な分野、宇宙論的加速器物理学(cosmological collider physics)を切り拓き、その後の発展を牽引してきた。野海氏の研究は、素粒子物理学と宇宙論の架け橋となり、人類が地上加速器実験では到達不可能なエネルギー領域の物理法則を宇宙観測によって検証する新しい道を確立したものである。これは西宮湯川記念賞に相応しい業績である。

西宮市池田町11-1 フレンテ西宮4階

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