西宮湯川記念賞

ページ番号:11664971

西宮湯川記念賞とは

 西宮湯川記念賞は、理論物理学における研究を奨励するため、40歳未満の若手研究者による顕著な業績に対して贈呈しているものです。第32回(2017年)までに、39名の方が受賞されています。

実施概要

 平成29年度は、全国から21件の推薦がありました。西宮湯川記念賞選考委員会(委員長:矢花一浩 筑波大学計算科学研究センター教授)および西宮湯川記念事業運営委員会(委員長:國廣悌二 京都大学大学院理学研究科教授)での審査の結果、深谷英則氏が受賞者に選ばれました。
 12月16日(土曜日)13時00分よりフレンテホールにて、記念賞贈呈式が開催されました。会場には多くの市民の皆様にお越しいただき、記念品贈呈のほか、受賞者決定の選考経過報告や、受賞者による受賞研究についての講演などが行われました。

贈呈式の様子1

贈呈式の様子2

贈呈式の様子3

贈呈式の様子4
※掲載写真の無断使用を禁じます。

受賞者

深谷 英則 氏(大阪大学大学院理学研究科 助教)

深谷英則氏

※掲載写真の無断使用を禁じます。

受賞研究

カイラル対称性の自発的破れと質量の起源の研究

受賞理由

 素粒子物理学の標準模型では、物質を構成している陽子や中性子はクォークという素粒子3個から構成され、クォーク間の相互作用は量子色力学(QCD)で記述される。クォークはスピンという固有の回転を持ち、運動方向に対して右回りまたは左回りに回転している。もしクォークの質量が0だとすると、回転の向きは変化できない。この性質をカイラル対称性と呼ぶ。現実のクォークの質量は非常に小さく、クォーク3個の質量を足しても陽子や中性子の質量のわずか2%に過ぎない。残りの98%の質量は、南部陽一郎博士によって提唱された、カイラル対称性が相互作用の結果として破れる機構(カイラル対称性の自発的破れ)によって説明できると考えられている。この描像は、湯川秀樹博士が予言したパイ中間子の存在と性質を自然に説明するため、長年正しいと信じられてきたが、カイラル対称性の自発的破れをQCDの基礎方程式から直接示すことは極めて難しい問題であった。
 深谷氏と共同研究者は、格子ゲージ理論という数値計算手法を用い、カイラル対称性の自発的破れがQCDで起こることを世界で初めて説得力のある形で示した。そのような数値的証明は、高性能のスーパーコンピュータを用いても容易ではなかったが、深谷氏は、カイラル対称性を厳密に保つ数値計算手法と、軽いクォークを含んだ有限体積でのQCDダイナミクスに対する氏の深い洞察から得られた解析手法とを組み合わせることで、この難題を解決した。この成果は、格子ゲージ理論による研究の一つの到達点であるだけでなく、物質の質量の真の起源がQCDにおける相互作用の結果として理解できることを示した点で深い物理的意義を持っており、高く評価されるものである。

これまでの受賞者

年度受賞者(敬称略)受賞研究
11986米谷 民明弦理論に基づく量子重力の研究
21987氷上 忍アンダーソン局在へのくりこみ群の応用
31988柳田 勉ニュートリノ質量と統一理論
41989小貫 明複合液体の動的理論
51990

(1)加藤 光裕、小川 格
(2)中村 卓史

【受賞研究2件】
(1)〔共同研究〕弦理論の共変的量子化
(2)数値的一般相対論

61991大塚 孝治相互作用するボゾン模型による原子核の集団運動の研究
71992金子 邦彦結合写像格子の導入による時空カオスの研究
81993筒井 泉、原田 恒司〔共同研究〕量子異常を含むゲージ理論の量子論
91994阿久津 泰弘、出口 哲生〔共同研究〕可解統計力学模型に基づく結び目理論
101995永長 直人強相関電子系のゲージ場理論
111996岡田 安弘、山口 昌弘〔共同研究〕超対称標準理論におけるヒッグス粒子の質量
121997初田 哲男核媒質中におけるハドロンの動的構造の研究
131998草野 完也電磁流体力学的最少エネルギー原理に基づく太陽フレア発現機構の研究
141999小形 正男一次元強相関電子系の研究
152000石橋 延幸境界を持つ共形場の理論および行列模型による構成的超弦理論の研究
162001杉山 直宇宙マイクロ波背景放射ゆらぎの研究
172002村山 斉超共形不変性の量子異常によるゲージーノ質量生成機構
182003柴田 大連星中性子星の合体によるブラックホールの形成
192004古崎 昭相互作用する一次元電子系における電子伝導の研究
202005白水 徹也ブレーン宇宙上のアインシュタイン方程式
212006肥山 詠美子量子少数粒子系の精密計算法の開発とハイパー原子核への応用
222007諸井 健夫グラビティーノの宇宙論的影響の研究
232008笹本 智弘非平衡定常系における確率的模型の厳密解
242009平野 哲文相対論的流体力学に基づくクォーク・グルーオン・プラズマの研究
252010小松 英一郎宇宙マイクロ波背景輻射を用いた初期宇宙理論の検証
262011古澤 力カオス力学系モデルによる細胞分化の理論的研究
272012福嶋 健二ハドロン物質からクォーク物質への相転移の理論的研究
282013高柳 匡、笠 真生〔共同研究〕ホログラフィック原理を用いた量子もつれの研究
292014立川 裕二次元の異なる場の量子論の間に成り立つ対応関係の発見
302015沙川 貴大情報熱力学の構築
312016日高 義将、渡邉 悠樹
※「高」は正しくは「はしごだか」(環境依存文字)
一般化された南部・ゴールドストーンの定理の確立 ※共同研究ではない
322017深谷 英則カイラル対称性の自発的破れと質量の起源の研究