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第32回 西宮湯川記念賞受賞者

更新日:2018年10月25日

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西宮湯川記念賞の実施内容

 平成29年度は、全国から21件の推薦がありました。西宮湯川記念賞選考委員会(委員長:矢花一浩 筑波大学計算科学研究センター教授)および西宮湯川記念事業運営委員会(委員長:國廣悌二 京都大学大学院理学研究科教授)での審査の結果、深谷英則氏が受賞者に選ばれました。
 12月16日(土曜日)13時00分よりフレンテホールにて、記念賞贈呈式が開催されました。会場には多くの市民の皆様にお越しいただき、記念品贈呈のほか、受賞者決定の選考経過報告や、受賞者による受賞研究についての講演などが行われました。

※掲載写真の無断使用を禁じます。

受賞者

深谷 英則 氏(大阪大学大学院理学研究科 助教)

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受賞研究

カイラル対称性の自発的破れと質量の起源の研究

受賞理由

 素粒子物理学の標準模型では、物質を構成している陽子や中性子はクォークという素粒子3個から構成され、クォーク間の相互作用は量子色力学(QCD)で記述される。クォークはスピンという固有の回転を持ち、運動方向に対して右回りまたは左回りに回転している。もしクォークの質量が0だとすると、回転の向きは変化できない。この性質をカイラル対称性と呼ぶ。現実のクォークの質量は非常に小さく、クォーク3個の質量を足しても陽子や中性子の質量のわずか2%に過ぎない。残りの98%の質量は、南部陽一郎博士によって提唱された、カイラル対称性が相互作用の結果として破れる機構(カイラル対称性の自発的破れ)によって説明できると考えられている。この描像は、湯川秀樹博士が予言したパイ中間子の存在と性質を自然に説明するため、長年正しいと信じられてきたが、カイラル対称性の自発的破れをQCDの基礎方程式から直接示すことは極めて難しい問題であった。
 深谷氏と共同研究者は、格子ゲージ理論という数値計算手法を用い、カイラル対称性の自発的破れがQCDで起こることを世界で初めて説得力のある形で示した。そのような数値的証明は、高性能のスーパーコンピュータを用いても容易ではなかったが、深谷氏は、カイラル対称性を厳密に保つ数値計算手法と、軽いクォークを含んだ有限体積でのQCDダイナミクスに対する氏の深い洞察から得られた解析手法とを組み合わせることで、この難題を解決した。この成果は、格子ゲージ理論による研究の一つの到達点であるだけでなく、物質の質量の真の起源がQCDにおける相互作用の結果として理解できることを示した点で深い物理的意義を持っており、高く評価されるものである。

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