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おおた先生のわくわくだより

更新日:2026年3月23日

ページ番号:66847807

おおた先生のプロフィール

太田 秀紀(おおた ひでき)
   日本小児科学会認定小児科専門医
   日本小児心身医学会認定子どもの心の専門医
【専門分野】発達障害、心身症、重症心身障害児医療
【趣味】音楽鑑賞(主に洋楽ロックなど)

第51回 「やる気と実行機能」

「子どものやる気をどうやったら引き出せますか?」というご質問を保護者の方から、
教員など子どもに関わるあらゆる職種の方からも、よくお受けします。
「やる気がない」というのは大人による評価ですが、そこには「できるはずなのに怠けている」
というニュアンスが含まれているように思います。
果たしてそのような見立てで合っているのでしょうか?
本稿では「やる気スイッチの入れ方」は残念ながら説明できませんが、
「なぜやる気がない(ように見える)のか」について、「実行機能」というキーワードで考えてみたいと思います。

「実行機能」とは「目標を立てて効果的に実行していく能力」のことを言い(まさに「やる気がある」状態ですね)、
医学や脳科学の世界では近年研究が進められています。
実行機能は、

  1. 意思決定
  2. 計画・立案
  3. 計画実行
  4. 効果的遂行

というステップを経るといわれています。

例えば小学生のある子に「漢字大テスト(学年末の総まとめのようなテスト)に合格する」
という目標があるとしましょう。
この場合、実行機能がスムーズに発動されるステップは、

  1. 「合格するぞ、したい!」と決める
  2. 十分な準備期間・練習量を考える、決める
  3. 2で計画した通り勉強する
  4. 3を振り返り、よく間違える漢字中心に勉強する

となります。

発達凸凹をもつ子どもはその特性上、「実行機能」がとても苦手であると言われています。
先ほどの「漢字~」で言うと

  1. 「漢字に興味がもてない」、「書くことが苦手」
  2. 「適切な優先順位がつけられない」、「現実的な予定が組めない」
  3. 「集中力がなく他のことに目移りしてしまう」、「複数の作業がこなせない」
  4. (客観的な見立て、振り返りが苦手なため)「間違いに気づけない」、「修正できない」

このように、各々のステップで困難が待ち受けているわけです。
自力のみで試みても失敗を繰り返し、更に取り組みを後ろ向きにさせるという悪循環に陥ります。

大人は子どもが4つのステップを前向きに経験し、
最終的に「実行できた!」という成功体験をもたらすよう支える姿勢・対応が必要です。
特に「1.意思決定」において、子どもにいかに「やりたい、やってみようかな」という動機づけをするか、が重要です。
「やりたくない」状態の子どもに、やる気スイッチはどこにもありません。

また、「やってみたい」という第1スイッチが入ったあとのサポートも必要です。
2~4ステップでつまずいていないか見守り、適切な支援をしてあげてください。
「自分でやると決めたからには、自己責任」「手伝うのは甘やかしではないか」という意見も聞かれますが、
私の経験上、大人に支えられて「できた!」という経験を得てきた子どもほど、健全に成長しています。
「やる気」というものは大人が“引き出す”ものではなく、
大人が支えることで子ども自身に“芽生えさせる”ものなのだと思います。
そして、芽生えたてのやる気はとても脆いものですから、丁寧に育てていきましょう。

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