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おおた先生のわくわくだより

更新日:2024年3月19日

ページ番号:66847807

おおた先生のプロフィール

太田 秀紀(おおた ひでき)
   日本小児科学会認定小児科専門医
   日本小児心身医学会認定子どもの心の専門医
【専門分野】発達障害、心身症、重症心身障害児医療
【趣味】音楽鑑賞(主に洋楽ロックなど)

第45回 「なぜ成功体験が大切なのか」

「やってみたらできた!」という経験が子どもの成長に繋がるということは、
外来診療の際によく保護者の方へ伝えていることです。
親御さんの中には「失敗から学んでほしい」という声が聞かれることもよくあります。
また、学校の先生や保育士さんから「あえて失敗して困ってもらっています。
(「子ども自身が困れば、そこから学ぶだろう」という発想)」という指導方針を聞くこともあります。
そういったお気持ち・ご意見もよく分かるのですが、私の経験からは、
自閉スペクトラム症(ASD)やその傾向のある子どもたちに対して、
「失敗をさせる・失敗から学ばせる」は効果が期待できないばかりか、
成長の妨げになるかもしれない危険な対応に思えます。
 
ASDの子どもたちの特徴のひとつに、「苦しい・悲しい記憶は、ずっと消えない」があるように思います。
定型発達の子どもでは、ネガティブな経験も時間が経つと忘れたり、「過ぎたこと」として割り切る事が
(強烈な体験は別ですが)ある程度できます。
一方、ASDの子はずっと鮮明に覚えていて、時々急に思い出したりもします。
自分のことを話せるようになったASDの方から話を聞くと、
「当時の体験や気持ちを、当時のままはっきり思い出してしまい苦しい。」とのことでした。
記憶は時間が経過しても風化したり、忘れたりすることはないようです。
私たちはネガティブな感情を、ある程度時間経過でリセットし、新たな経験にチャレンジしていると思います。
しかし、ASDの子は失敗してがっかりした経験をすればするほど、積み上がる一方だと言えるかもしれません。
本人がやりたかったことでの失敗はそこまで引きずりません。
しかし大人からやらされて失敗したことは、負の経験としてずっと記憶に残ります。
人間生きていればどうしても失敗も体験します。
ASDの子は特性のために保護的な環境でなければ失敗だらけの生活になりかねません。
失敗体験の苦しさがリセットされず積み上がった子どもが、年齢を重ねて無気力になったり反抗的になる
(いわゆる二次障害)ことは、容易に想像できると思います。
 
では、「苦しい・悲しい記憶は、ずっと消えない」特性に対し、有効な手立てはあるのでしょうか?
そうです、それが「成功体験から自信を育む」なのです。
無駄に失敗させるのはやめましょう。
やりたいこと・好きなことをどんどんやりましょう。
苦手なことは適切な支援下で「やってみたらできた!」となるよう大人が工夫しましょう。
やっても失敗に終わりそうな場合はタイミングを待つ勇気もときに必要です。
そうやって、「満足や自信が、悲しみや苦しみを上回る」ことで子どもは成長するように思います。 
 
※こども未来センター診療所の開所状況はホームページ、公式X(旧Twitter)で随時お知らせしております。引き続きご参照ください。

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