文化庁調査 市内7カ所が名勝地に

文化庁が平成23年度から実施してきた「名勝」に関する総合調査において、このたび市内では、「蓬萊峡」、「武田尾温泉」、「甲山」、「名次山」、「西宮神社苑池」、「御前浜」、「漢織呉織伝承地」の7カ所が選択・掲載されました。
国や県・市等の指定文化財では、「史跡」や「天然記念物」のほか、美術工芸品・建築などの「重要文化財」、いわゆる人間国宝などの「無形文化財」などがよく知られています。こうした指定文化財のカテゴリーのひとつに「名勝」があります。
市内にはこれまで名勝はありませんでしたが、淡路島の慶野松原や京都府の天橋立、各地の寺院や城郭にある庭園などが名勝として指定されています。
名勝は、ほかの指定文化財に比較して指定件数が少なく、広く国民に知られているとは言い難いのが現状です。
しかし、各地の名勝地は古くから「○○八景」や「○○百景」などといわれたり、「景勝地」や「由緒ある行楽地・観光地」として私たちの暮らしの中に溶け込んでいるものです。
それらは、単なる自然の眺めではなくて、時代を超えて私たちの祖先から受け継がれた自然と文化が融合した自然観、風景観を表すものです。
特に、地域に固有の名勝地は、その地域独自の自然観を端的に表しているものとして、地域文化の保存と継承にあたっては欠くことができないものです。
そのような、地域や国全体にとって重要な名勝地を収集・整理し、保存と活用をはかることを目的として今回の調査が行われました。
皆さんもぜひ名勝地を訪れてみてください。
問合せは文化財課(0798・33・2074)へ。

文化庁調査で選ばれた市内の名勝地


武田尾温泉(たけだおおんせん)  《塩瀬町名塩》
写真:武田尾温泉
寛永18年(1641年)武田尾直蔵が発見したと伝えられる。
現在は、4軒の温泉旅館があり、渓谷美、紅葉の名所として知られる。
水上勉「櫻守」の舞台となった。
温泉地として現在もにぎわっている。
蓬萊峡(ほうらいきょう)  《塩瀬町生瀬》
写真:蓬萊峡
六甲山の北側を東西に走る有馬高槻構造線に沿った六甲断層帯にあり、垂直に近い崖(がけ)に露出する圧砕された花崗(かこう)岩の崩壊が顕著である。
現在は、しるべ岩・座頭岩・屏風(びょうぶ)岩等の呼称がある。
甲山(かぶとやま)  《甲山町》
写真:甲山
標高309.2 メートルの独立丘で、当地方の基盤岩花崗岩上に噴出した安山岩を山体とする。
山の形が兜(かぶと)形であるので、甲山といったという。
阪神地方の象徴的な山として現在も遠足やハイキングなどで親しまれている。
名次山(なつぎやま)  《名次町》
写真:名次山
「摂津名所図会」に、名次岳として解説がある。
また、「万葉集」に高市連黒人の歌「吾妹子にいなのは見せつ名次山角の松原いつかしめさん」がある。
現在の場所は、広田神社の摂社「名次神社」所在地。

(注)寛政8年~10年(1796年~1798年)に刊行された摂津国の地誌

漢織呉織伝承地(あやはとりくれはとりでんしょうち)  《松原町》
写真:漢織呉織伝承地
旧兵庫縣史蹟「兵庫縣 漢織呉織松 染殿池」石碑がある。
現在、漢織・呉織が糸を染めたという「染殿池」とそれを詠んだ小沢種春の句碑「千世もなをのこすみどりの色深き綾はの松に染殿の池」がある。
また、織物の祖「織姫大明神」をまつった喜多向稲荷神社がある。
西宮神社苑池(にしのみやじんじゃえんち)  《社家町》
写真:西宮神社苑池
「摂津名所図会」に西宮神社鳥瞰(かん)図があり、柵(さく)で囲まれた比較的大きな苑池として描かれている。
嘉永元年(1848年)に「嘉永橋」が、明治40 年に「瑞寶橋」が建造されている。
神社参拝者に親しまれている。
御前浜(おまえはま)  《西波止町》
写真:御前浜
「摂津名所図会」に、御前浜の解説が掲載されているほか、鎌倉時代の歌集「夫木和歌抄」に藤原定家・俊成ほかの歌があり、類する名称「御前澳」としては、「千載和歌集」、「広田社歌合」などにもみえる。
自然の海浜のほか、国指定史跡「西宮砲台」が含まれる。

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