障害を理由とする差別の解消の推進に関する職員対応要領 1 趣旨 この対応要領は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「障害者差別解消法」という。)第10条第1項の規定に基づき、西宮市の事務・事業の実施にあたり、障害を理由とする差別を行わないよう、本市職員が対応するための基本的事項を定めるものとする。 2 対象となる職員 市長事務部局、監査事務局、選挙管理委員会事務局、公平委員会事務局、農業委員会事務局、固定資産評価審査委員会事務局、教育委員会事務局、議会事務局及び消防局に所属するすべての職員(以下「職員」という。)をいう。 3 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な考え方 (1) 障害のある人の権利保障に関する動向 障害のある人の尊厳と権利を保障するための人権条約である障害者権利条約が平成18年に国連で採択され、平成20年に発効するなど、近年、国際社会において権利保障の取組が進んでいる。 わが国においては、障害者権利条約の批准承認に向け、平成23年に障害者基本法の改正を行い、法律の目的を「全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現」とした。加えて、それまで「身体障害、知的障害又は精神障害があるため、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者」としていた障害者の定義を「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」と改めた。この改正により、障害の範囲については「その他の心身の機能の障害」として、難病等に起因する障害を含めるとともに、障害のある人が日常生活又は社会生活で受ける制限は、心身の障害のみに起因するものではなく、様々な“社会的障壁”と相対することによって生ずるものという考え方が示された。 <社会的障壁の例> ・事物(通行や利用しにくい施設・設備や音声案内・点字・手話通訳の欠如など) ・制度(利用しにくい制度など) ・慣行(障害のある人の存在を考慮しない習慣や文化など) ・観念(障害のある人に対する偏見、誤解、差別的な意識など) また、差別には合理的配慮の否定を含むという障害者権利条約の考え方に沿って、「社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによって差別等の禁止規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない」ことを新たに規定した。 平成25年6月には、障害のある人への差別の禁止に関するより具体的な規定を示すとともに、障害者基本法の差別禁止規定を具体化する法律として、障害者差別解消法が公布され、附則の一部を除き平成28年4月から施行された。 (2) 西宮市が目指す共生社会 本市では、障害者基本法に基づく障害者計画として西宮市障害福祉推進計画を策定し、同計画において「ともに生き ともに支えあう 共生のまち 西宮」をまちの将来像として掲げ、障害のある人もない人も、全ての人が互いに人格と個性を尊重し合いながら、住み慣れた地域で安心して暮らせる“共生のまちづくり”を進めている。中でも、障害のある人の社会参加を阻む「社会的障壁の除去」や「障害を理由とする不当な差別の解消」に関する取組は、計画の実現に向けた重要な施策の一つであり、障害者差別解消法の趣旨を踏まえ、全庁一体となって積極的に推進していかなくてはならないものである。 <障害を理由とする不当な差別の解消に必要な観点> ・障害のある人もない人も、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重される。 ・障害のある人も社会を構成する一員であり、あらゆる分野の社会活動に参加する機会が確保されるとともに、地域生活を営む権利を有する。 ・障害を理由とする差別の多くが障害に対する偏見等に起因していることから、障害に対する正しい理解を広げることが必要である。 ・全ての市民・事業者・行政が主体的かつ相互に協力することにより、「障害のある人もない人も共に生きる」という新たな市民文化を創造する。 4 障害を理由とする不当な差別の解消の推進に関する基本的事項 職員は、障害を理由とする不当な差別的取扱いを行わないようにするため、また、社会的障壁を除去する合理的配慮を適切に行うため、以下の基本的事項を踏まえて取り組むこととする。 (1) 不当な差別的取扱い    不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害を理由として、障害のない人と比較して区別・排除・制限及び条件を付ける等の異なる取扱いをすることであって、障害のある人の権利や利益を侵害するものである。    「障害を理由として」とは、障害を直接の理由とする場合と、障害そのものではないが、車いす等の福祉用具の利用や盲導犬・介助犬・聴導犬の同行等のような障害に関連する事由を理由とする場合も含まれる。 ア 差別的取扱いの例 ・障害があることを理由に、窓口対応を拒否する。 ・障害があることを理由に、対応の順序を劣後させる。 ・障害があることを理由に、書面の交付や資料の提供等を拒む。 ・障害があることを理由に、説明会やシンポジウム等への出席を拒む。 ・事務事業の遂行上、特に必要でないにもかかわらず、障害があることを理由に来所の際に付き添い者の同行を求めるなどの条件をつける。 イ 正当な理由に基づく行為 差別的取扱いが正当な理由の下で行われたものであり、かつ、他に代わる手段がない等のやむを得ない事情を有すると認められる場合には、障害者差別解消法が禁止する差別には当たらない。何が正当な理由に当たるのかは、個別の状況に応じて異なってくるため、あらかじめ列挙することは困難であるが、一例としては、障害のある人の生命や身体を保護する場合などが考えられる。なお、正当な理由についての説明責任は職員にあり、その内容は第三者の立場から見ても納得の得られるような合理性を備えたものでなければならない。 (2) 合理的配慮の提供 合理的配慮は、個別具体的な場面において、障害のある人(障害の状況により自らの意思を表明することが困難な場合に、その家族や支援者等が本人を補佐して意思を表明する場合を含む。)から社会的障壁を取り除くための配慮を必要としている旨を伝えられた場合に、対応が求められるものである。なお、合理的配慮の提供に伴う負担が過重である場合には、その提供について法的義務は課せられないこととされる。 ただし、その場合であっても、配慮を求める障害のある人と協議し、過重な負担とならない別の方法で合理的配慮の提供に努める必要がある。なお、障害のある人から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明がない場合においては、法的義務は生じないが、障害者差別解消法の趣旨に照らし、自主的に適切な配慮を行うことが望ましい。 ア 望ましい合理的配慮の例 合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであるが、具体例としては、次のようなものがある。なお、記載した具体例についてはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。 <ルール・慣行の柔軟な変更の具体例> ・下肢障害のある人が立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の者の理解を得た上で、本人の順番が来るまで別室や椅子を用意する。 ・視覚障害者に対して、スクリーンや板書等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確保する。 ・本人が必要とする場合に、補助犬(介助犬、盲導犬、聴導犬)を同伴することを認める。 <物理的環境への配慮の具体例> ・段差がある場合に、簡易スロープを設置するなどの方法によって、車いす利用者の移動を補助する。 ・車いす利用者が届かない高い所に置かれたパンフレット等を取って渡す。 ・目的の場所までの案内の際に、障害者の歩行速度に合わせた速度で歩いたり、左右・前後・距離の位置取りについて、本人の希望を聞いたりする。 ・トイレには手摺を設置する等の安全に利用できる環境整備を行う。 ・障害のある人が安心して歩けるように通路には物を置かないようにする。 <意思疎通の配慮の具体例> ・初めに、利用者本人にとって理解しやすいコミュニケーション方法を把握した上で、筆談、読み上げ、手話などのコミュニケーション手段を用いる。 ・通常であれば口頭で行う案内を、紙にメモをして渡す。 ・障害者本人から申し出があった際に、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対する。 イ 過重な負担についての考え方 合理的配慮の提供を求められた者にとって、過重な負担があるかどうかの判断にあたっては、「経済的負担」や「業務遂行に及ぼす影響」などを考慮する必要がある。 @経済的負担 過重な負担となる基準については、合理的配慮の提供に要する経費の額等で一概に線引きすることは困難であるが、多額の費用を要する場合には求められた対応が困難であることも十分に考え得るため、提供する配慮の内容については、相手方と代替案の検討を含めた十分な意思疎通を図り、職員として合理的配慮の提供義務を果たせるようにすることが必要である。 <代替案の具体例> ・手話による通訳を求められたが提供できない場合に、本人の了解を得た上で、筆談により対応する。 →各窓口に手話通訳者を配置することは困難であるが、筆談による対応であれば既存の体制でも対応できる場合に、求められた配慮の形とは異なるが必要な情報を伝えるという目的を達成するための代替手段を講じた例。 A業務遂行に及ぼす影響 合理的配慮の提供により、業務遂行に著しい支障をきたすか否か、事業施策の本質を損なわないかといった観点からの判断が必要である。なお、過重な負担についての説明責任は職員にあるため、合理的配慮の提供を求めた者に対する丁寧な説明等により、その責任を果たさなければならない。 (3) 情報環境の向上 市有施設において、障害のある人が円滑に利用できるよう構造の改善や設備の整備に努めるとともに、本市からの各種制度や施策に関する情報提供についても、障害のある人が利用しやすいようアクセシビリティの向上に努める。 視覚障害 ・文書を点訳(点字文書化)する。 ・パソコンの音声読み上げソフトで利用できるようテキストデータで提供する。 ・通常の文書より文字を拡大する。 ・文書に音声コードを添付する。 色覚障害 ・印刷物に複数の色を使う場合は、色が見分けやすいように色の組み合わせに配慮する。 聴覚障害 ・手話通訳、要約筆記、ノートテイク(筆談) 知的障害 ・文書にルビを付ける、文書だけでなく絵や図を使う。   5 障害を理由とする差別に関する相談体制の整備 障害を理由とする差別に関して、障害のある人等からの相談に応じると共に適切な措置を講じるため、相談窓口を下記のとおり設置する。 市長事務部局 障害福祉課 教育委員会事務局 教育総務課 消防局 総務課 選挙管理委員会事務局 選挙管理課 監査事務局 監査事務局 公平委員会事務局 公平委員会事務局 農業委員会事務局 農業委員会事務局 固定資産評価審査委員会事務局 税務管理課 議会事務局 総務課 6 職員の理解促進のための研修・啓発 差別の原因として、障害に対する無理解や偏見等が指摘されていることから、職員は障害や個別の特性に応じた配慮、社会的障壁の除去の必要性等に関する理解を深めるための研修や催しに積極的に参加する。 7 職員の懲戒について  職員が障害のある人に対して、不当な差別的取扱い又は過重な負担がないにもかかわらず合理的配慮の不提供の事実が確認された場合、その態様によっては市民への信用失墜行為などに該当し、地方公務員法第29条(懲戒)の規定に基づき、「西宮市職員の懲戒処分に関する指針」に照らして懲戒処分等に付されることがある。 付 則 この対応要領は、平成28年4月1日から施行する。 この対応要領は、平成29年4月1日から施行する。