第2章 障害のある人を取り巻く現状と課題 1 障害のある人の状況 本計画において「障害のある人」とは、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のそれぞれの障害者手帳を所持している人のほか、障害者自立支援医療(精神通院医療)・特定医療費(指定難病)を受給している人を指しますが、これら以外にも日常生活や社会生活に困難を抱え、支援や配慮が必要な人が一定数いることも想定し、施策の推進にあたる必要があります。   (1)全体の状況 ① 人口・世帯数等の推移 本市の総人口は、減少傾向にあり、令和5年で483,559人になっています。一方で世帯数は増加し続けています。また、障害者手帳所持者数は年々増加しており、障害者手帳所持者の割合も増加傾向にあります。 ② 障害者手帳所持者数の推移 障害者手帳所持者数の推移をみると、身体障害者手帳所持者数は、減少傾向にあり、令和5年では15,304人となっています。また、療育手帳所持者数、精神障害者保健福祉手帳所持者数ともに、年々増加しており、令和5年では、療育手帳所持者数は4,743人、精神障害者保健福祉手帳所持者数は4,332人となっています。   ③ 障害支援区分認定者の状況 障害支援区分認定者の状況をみると、区分認定を受けている人数は2,498人となっています。障害種別ごとにみると、知的障害のある人が最も多く1,176人(47.1%)、身体障害のある人が705人(28.2%)、精神障害のある人が611人(24.5%)、難病患者等が6人(0.2%)となっています。   ④ 障害種別ごと障害支援区分認定者数の推移 障害支援区分認定者数の推移をみると、身体障害のある人、知的障害のある人、精神障害のある人は増加傾向、難病患者等は横ばい傾向での推移となっており、特に精神障害のある人の増加率が大きくなっています。 (2)身体障害者手帳所持者の状況 ① 年齢別の身体障害者手帳所持者数の推移 身体障害者手帳所持者数は、減少傾向で推移しており、年齢別では65歳以上が全体の7割以上を占めています。   ② 等級別の身体障害者手帳所持者数の推移 身体障害者手帳所持者の等級は、5級は少し増加傾向、1~4級は減少しており、6級は横ばい傾向での推移となっています。 ③ 年齢別・等級別の身体障害者手帳所持者の状況 65歳以上を除くすべての年代で、1級が最も多くなっており、若い世代ほど1級の割合が高くなっています。65歳以上では4級が最も多くなっています。   ④ 障害部位別の身体障害者手帳所持者数の推移 障害部位別の身体障害者手帳所持者数をみると、視覚障害、聴覚・平衡機能障害、音声・言語障害と内部障害は増加しています。肢体不自由については、年々減少しています。 (3)療育手帳所持者の状況 ① 年齢別の療育手帳所持者数の推移 平成30年と比較して、療育手帳所持者数は1,000人近く増加しています。いずれの年代でも増加していますが、特に0~17歳で増加率が約1.2倍と高くなっています。 ② 判定別の療育手帳所持者数の推移 判定別では、いずれの判定も増加していますが、特にB2は平成30年との比較で約1.4倍と増加しています。 ③ 年齢別・判定別の療育手帳所持者の状況 0~17歳、18~39歳ではB2の割合が最も多く、40~64歳、65歳以上ではAが最も多くなっています。   (4)精神障害者保健福祉手帳所持者等の状況 ① 年齢別の精神障害者保健福祉手帳所持者数の推移 0~17歳はほぼ横ばいで推移しており、18~64歳、65歳以上は増加しています。また、精神障害者保健福祉手帳所持者に占める18~64歳の割合が増加しています。 ② 等級別の精神障害者保健福祉手帳所持者数の推移 等級別では全ての等級で増加しています。特に2級は約1.3倍と増加しています。   ③ 年齢別・等級別精神障害者保健福祉手帳所持者の状況 17歳以下、18~39歳の年代では、3級が最も多くなっており、40歳以上では2級が最も多くなっています。 ④ 自立支援医療(精神通院医療)受給者数の推移 自立支援医療(精神通院医療)受給者数は年々増加しており、平成30年と比較して約1.2倍となっています。   ⑤ 疾患別自立支援医療(精神通院医療)受給者の状況 疾患別の自立支援医療(精神通院医療)受給者をみると、「気分障害」が最も多く、3,421人で全体の約44%を占めています。次いで、「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」が1,611人で約21%を占めています。 (5)難病患者等の状況 ① 特定医療費(指定難病)受給者数の推移 特定医療費(指定難病)受給者数は増加傾向にあります。「難病の患者に対する医療等に関する法律」が平成27年1月1日に施行され、医療費助成の対象となる疾病が拡大されています。 ② 小児慢性特定疾病医療費受給者数の推移 小児慢性特定疾病医療費受給者数は平成30年と比較して約1.2倍となっております。対象疾病数も共に増加傾向となっております。 2 西宮市の現状と課題の整理 令和4年11月から令和5年2月にかけて行った各種アンケート結果等に基づく本市の現状と課題は次の通りです。 (1)地域での暮らしに関する現状と課題 ■ 希望する地域での暮らし方が多様化している  統計データによると、本市の人口は少しずつ減少している一方で、高齢化が進行しており、また、人口に占める障害のある人の割合は、少しずつ増加しています。  今後、希望する暮らし方として、配偶者や家族と一緒に暮らすことを5~7割の人が希望する一方で、ひとりで暮らすことを望む人が1~3割と一定数以上います。  地域で自立して生活するにあたり、気軽に相談を聞いてもらえる場所、グループホームなどが必要とされています。 ■ 障害福祉サービス提供事業所で人材の確保・定着・育成が課題となっている  障害福祉サービスを提供する事業所が課題と感じていることについて、事業種別にかかわらず、人材の確保・定着・育成、報酬体系・報酬額の低さが回答の上位を占めています。  障害のある人のサービス利用の希望は、障害の種別に関わらず、居宅介護(ホームヘルプ)やガイドヘルプサービス(移動支援)の利用希望が高く、また、知的障害のある人はグループホーム(共同生活援助)やショートステイ(短期入所)、精神障害のある人は就労に関するサービスの利用希望が高い傾向にあります。 ■ 災害時に一人で逃げられない人がいる  知的障害のある人は災害時に一人で逃げられる割合が低く、災害時に避難先の指示を希望しています。また、身体障害や精神障害のある人、難病の人も3~4割が一人で逃げられないと回答しています。  また、3年前と比較して、逃げずに家にいたい人、指定避難所へ行きたい人が減少し、福祉避難所や家族など知り合いの家に避難したい人が増加しています。  サービス提供事業所の2~4割が災害時に障害のある人を受け入れると回答しており、3割以上が受け入れを検討しています。  (2) 一般就労・福祉的就労に関する現状と課題 ■ 障害者雇用を検討している企業が多い一方で、サポート人材や体制が不足している  身体障害のある人、難病の人は正社員・正職員、知的障害のある人は就労継続支援B型での就労が2~3割である一方で、精神障害のある人は働いていない人が約5割と半分を占めています。  企業へのアンケートによると、およそ3割の企業が現在、障害のある人を雇用しており、業種別でみると運輸業、郵便業で雇用している割合が高い傾向にあります。一方で何らかの形で障害のある人を雇用したいと考えている企業は6割以上となっています。  一方で、身体障害のある人を雇用していることが多く、知的障害や精神障害のある人を雇用している企業はまだ少ない傾向にあります。  障害のある人を雇用していない企業の理由として、サポートする人材・体制の不足や設備の不十分さが挙げられています。 ■ 障害のある人が働くにあたり、周囲の理解など働きやすい環境が求められている  障害のある人が、安心して働くために必要と思うこととして、障害のある人ができる仕事を増やすこと、働く日数や時間の希望を調整できることが挙げられています。  また、障害のある人が、職場や一緒に働く人に希望することとして、経営者や同僚が障害への理解を深めることや、通院等で休むことができることが挙げられています。  企業側は、障害のある人が希望することを、経営者や同僚が障害への理解を深めることと認識しており、障害のある人側と企業側の認識は一致しています。 ■ 給料・工賃の額に不安を感じている  障害のある人の仕事への不満等について、2~3割の人が不安や不満は特にないと回答していますが、給料や工賃が安いこと、ずっと働けるか不安であることと回答した人も2~3割と少なくありません。  給料や工賃が安いと回答した障害のある人は、就労継続支援B型事業所で働いている人がおよそ3割であり、正社員・正職員、パートアルバイトなどの非常勤の人がそれぞれ2割以上となっています。   (3) 療育・発達支援に関する現状と課題 ■ 希望通りの学校・園等に通っている一方で、卒業後の進路に不安を感じている  障害のある児童のおよそ9割が希望通りの保育所、幼稚園、児童発達支援センターや学校等に通っていると回答しています。  ふだんの生活でいやな思いをした場面では、およそ3割がいやな思いをしたことはないと回答していますが、およそ3割が学校、2割が保育所・幼稚園・認定こども園と回答しています。  卒業後の具体的な進路や働き方について、イメージを持てない障害のある児童とその保護者がおよそ半数を占めています。 ■ 相談窓口やサービスの情報、継続的な支援が求められている  家族の不安として、成長段階に応じて、適切かつ継続的に支援を受けられるか、障害のことや療育について相談できる相談窓口がわからなかったという意見が多くなっています。ただし、3年前よりはその割合が減少しています。一方で、介護などのために利用できる福祉サービスの種類・内容がわからなかったという意見は増加しています。  こども未来センターの認知度が高く、相談先としても広く受け入れられています。  児童発達支援センターに、学校との連携や、発達支援(療育)の充実が望まれています。  医療的ケアが必要なことで生活上でできないことや通園・就労等での選択肢が限られるなど困難を抱えています。 ■ 習い事やスポーツをして過ごしたり、図書館や児童館、スポーツ施設利用の希望がある  放課後はおよそ7割、休日は8割以上の障害のある児童が家で過ごしています。  およそ1割の障害のある児童が、放課後等デイサービスや図書館・児童館・スポーツ施設を利用したくても利用できていません。  今後、毎日の暮らしの中でやりたいこととして、3割以上の障害のある児童が、習い事やスポーツを希望しています。 (4) 相談支援・権利擁護支援に関する現状と課題 ■ 気軽に相談できる場所へのニーズが高いにも関わらず、各種相談窓口等の認知度が低い  障害者あんしん相談窓口及び障害者総合相談支援センターにしのみやの認知度は1~4割であり、困ったときや相談したいときにどこにも相談していない人が2割以上います。年齢別では、40~60歳代の人の割合が高くなっています。  基幹相談支援センターや障害者あんしん相談窓口を設置していますが、気軽に相談を聞いてもらえる場所へのニーズは依然と高いままとなっています。  家族以外の相談先では、友だち、福祉事業所の職員、医療機関、職場の人が多く、障害のある児童の保護者は学校や幼稚園、保育所が最も高くなっています。  権利擁護に関する取組について、成年後見制度の認知度は4~5割ありますが、いずれも知らない人が3~4割います。 ■ 介助者が高齢化し、親亡き後への不安が高まっている  障害のある人の介助者は7割以上が50歳以上の人であり、また、65歳以上である割合は3~4割と、介助者の高齢化が進んでいます。  介助者が抱える悩みの多くが、将来、本人を介護できなくなったときのことであり、また、介護できなくなった際に、誰に頼めばよいかわからない人がおよそ3割と少なくありません。   (5) 共生社会・理解促進に関する現状と課題 ■ 地域の一人ひとりの障害への理解が求められている  障害や難病があることで、5~6割の人が普段の生活の中でいやな思いを経験しており、特に職場や学校、交通機関で経験した割合が高くなっています。  地域で自立して生活するために、地域の人が障害に対する理解が深まってほしいことや、就労にあたり、経営者や上司、同僚に障害への理解があってほしいなど、生活に関する多くの点で、人々の障害への理解が求められています。 ■ 障害者差別解消法や権利擁護に関する用語や法律、活動がほとんど知られていない  差別や偏見を受けた際の相談窓口の認知度が1~2割であり、相談をしたくてもできずに悩みを抱えている可能性があります。  障害者差別解消法の認知度は3年前に比べると高くなりましたが、それでもまだ1割ほどにしか知られていません。  企業等では、障害者差別解消法や合理的配慮の認知度は約5割となっています。  あいサポート運動や西宮市障害者共生条例など、権利擁護の取組は障害のある人等にもあまり知られておりません。   (6) 地域との協働に関する現状と課題 ■ 障害のある人が暮らす地域との協働が求められている  地域に住む人の障害についての理解を深めるためには、障害についての広報・啓発、学校での福祉教育・人権教育の充実、障害のある人のまちづくりへの参加、福祉施設の地域への開放や、地域住民との交流が必要と思われています。  加えて、障害のある児童の保護者は、障害の有無に関わらず、地域の学校に通学すること、障害のある人が地域活動に参加することも必要と考えています。 ■ 障害者団体や障害福祉サービス事業所は情報交換等の連携をしている  障害者関係団体は、7割以上が他団体との連携を行っており、定期的な会合などで情報交換をしています。  障害福祉サービス提供事業所では、すでにほとんどの事業種別において6割以上が他の事業所や団体と連携しており、連携する内容としては、日頃の情報交換や連絡会の開催が多くなっています。