多文化共生社会を考える
コロナ禍における想像力と多文化共生
同志社女子大学特任教授 藤原孝章

新型コロナウイルスの感染拡大が収束しない中、私たちはどこまで想像力を働かせて生活をしているのでしょうか。
感染者数は、感染急増地域に緊急事態が宣言された日本では30万人、変異種ウイルスの感染も拡大している世界では9000万人を超えています。(令和3年(2021年)1月13日時点)。
「世界がもし100人の村だったら」に例えると、100人に1人強が感染しているような状況なのに、私たちは感染リスク回避のために、自分の身の回りのことしか見ようとしていないように思います。

人の移動や行動が制限され、経済が循環しないことから、仕事を失った人が増えています。日本でも、旅客輸送、旅館・ホテル、飲食、販売、サービスなどの業種では、アルバイトやパート、派遣で働く人も多く、雇用の喪失が生活に重く響いています。不安定な需要と供給のために製造業や農水産業などでも影響は出ていることでしょう。中でも、外国人技能実習生の就労を頼みにしているところでは、業績の悪化のために実習を打ち切ったり、反対に実習生を必要としていても入国が困難な事態に直面しています。

一方で、在宅勤務やステイホームによって、女性の家事労働が増えたり、医療現場では、医師や看護師をはじめ、多くの医療スタッフが十分な睡眠をとることができず、感染の不安の中で長時間働いていると報じられています。
介護現場では、日々緊張の下、感染による重症化が懸念される高齢者と接触している人々がいます。日本では、一時期、学校が休みとなりましたが、世界には、いまだ学校が再開されず、学習が滞っている子どもたちも多くいます。感染予防のためにワクチン開発が急がれていますが、開発の恩恵にあずかれる人とそうでない人との格差が生まれています。

今、世界中で生じているこのような変化や人々の気持ちに対し、私たちが想像力を働かせてどれだけ寄り添えているのかが問われているような気がしてなりません。
新型コロナウイルスの世界的感染が明らかにしたのは、貧困や健康、ジェンダー、教育、働きがい、経済成長、技術革新などSDGs(持続可能な開発目標)の課題であり、全ての人が共に生きることのできる社会の在り方です。新型コロナウイルスは、その課題に対する私たちの想像力と行動変容を試しているのではないでしょうか。

【問合せ】秘書課(0798・35・3459)

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