「第37回 西宮湯川記念賞贈呈式」が開催されました
更新日:2022年12月20日
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山本直希氏「第37回西宮湯川記念賞」を受賞
西宮市では、理論物理学分野における研究者を奨励するため、若手研究者(40歳未満)の顕著な研究業績に対して、西宮湯川記念賞を贈呈しています。
令和4年度は全国から24件の推薦がありました。
西宮湯川記念賞選考委員会(委員長:押川正毅 東京大学物性研究所・教授)および西宮湯川記念事業運営委員会(委員長:川上則雄 京都大学大学院理学研究科・教授)での審査の結果、山本直希氏が受賞者に選ばれました。
令和4年12月3日(土曜日)13時より西宮市フレンテホールにて記念賞贈呈式が開催され、多くの市民の皆様にご参加いただき、記念品贈呈の他、受賞者決定の選考経過報告や、受賞者による受賞研究についての講演などが行われました。
【受賞者】
山本 直希(やまもと なおき)氏
慶應義塾大学理工学部物理学科 准教授
(受賞者写真の無断使用を禁じます)
【受賞研究】
「カイラル運動論の構築と応用」
【受賞理由】
電子やクォーク、ニュートリノなどのフェルミ粒子は、「自転」に対応する内部自由度であるスピンを持つ。フェルミ粒子は、質量がゼロのとき、粒子の運動とスピンの向きが同じである右巻き成分と、反対である左巻き成分に分離することができ、これらの自由度はカイラリティと呼ばれる。古典的には右巻きと左巻きが入れ替わることはなく、カイラリティは保存される。しかし、量子効果によって右巻きと左巻きの粒子数が変化する「カイラル量子異常」の存在が、場の量子論で理論的に知られていた。近年、原子核や物性の量子多体系でカイラル量子異常を起源とする粒子や電荷の流れを実験的に測定し、場の量子論の予言を実験的に直接検証する試みが精力的に行われている。このような現象は主に非平衡状態で現れるが、量子多体系の非平衡ダイナミクスを理論的に扱うことは難しい問題である。特に非自明なカイラリティを持つ物理系の実時間発展を理解することは未開拓な課題として残されていた。
山本氏は共同研究者とともに、カイラル量子異常を持つ場の量子論に基づき、ベリー曲率という幾何学的な特徴量を含む運動論的方程式を導出した。今日では、この方程式を基礎とする枠組みは「カイラル運動論」と呼ばれ、カイラル量子異常に限らず、トポロジー的な輸送現象を解析する普遍的な基礎理論としての地位を確固たるものにしている。
山本氏はその後も、カイラルプラズマ不安定性の発見、カイラルアルヴェン波やカイラル衝撃波の定式化、重力崩壊型超新星爆発の新しいメカニズムの提唱など、カイラル運動論の応用やカイラル物質の性質について先駆的研究を展開している。カイラル運動論の構築および一連の応用研究はカイラル物質研究の端緒を開いたものとして高く評価されており、西宮湯川記念賞に相応しい。
贈呈式の様子
山本直希様に市長から表彰状・楯・賞金・花束が贈呈されました。
※写真の無断使用を禁じます。
山本直希氏による受賞者講演
※写真の無断使用を禁じます。
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