「當る午歳」 笑福亭 三喬

甲陵中学一年の頃、勉強をしているフリをしながら聴いていた深夜ラジオ、流れて来たのは『初天神』。“賑わう天神さんの風景”が頭の中に映画のスクリーンのように広がってきました。“面白い”“楽しい”を超越して身体が震えたのを覚えています。県立西宮高校時代、授業中「序詞」「係り結び」「未然形」とさっぱり解らなかった百人一首。ところが落語の『崇徳院』を聴いたとたん目からウロコ「もう一度会いたいと言うラブレターだったんだ」。その瞬間から落語が教科書になりました。大学の四年間は寄席に通いつめ、卒業と同時に笑福亭松喬(しょきょう)に入門、今年で咄家(はなしか)生活三十一年目を迎えます。

お正月は毎年、天満天神・繁昌亭の高座に上がります。我々の世界、舞台を『高座』。それに対してお囃子(はやし)さんを『下座(げざ)』と呼びます。下から支えるという意味です。表の『招き』(看板)がお客様の足を止め、内から聞こえる三味線が小屋の中へと引き寄せます。そして咄家が笑いの世界に誘うのです。『高座』と『下座』どちらが欠けても寄席は成り立ちません。

我がふる里、西宮も同じです。『高』くそびえる甲山、眼『下』に広がる西宮浜、どちらが欠けても成り立ちません。『高』齢者と年『下』の若者、お互いに手を取り合って初めて素晴らしい街、西宮が出来るのです。

「うま歳」とかけて「おじいちゃん、おばあちゃんと初詣」ととく

そのこころは「孫(馬子)に寄り添い歩きます」

皆様にとって、良き一年でありますように。
(タイトル寄席文字・橘右佐喜)

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