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2012年1月25日 第1381号

市長対談 「西宮市新病院基本構想」
新しい公立病院のあり方とは

市は昨年末に、中央病院の経営改善と移転整備についての方向性を示す「西宮市新病院基本構想」(素案)を取りまとめ、現在市民の皆さんからの意見を募集しています。
基本構想の内容について、河野昌弘市長と西宮市PTA協議会会長・内田久恵さんに対談していただきました。
問合せは市立中央病院(0798・64・1515)へ。
写真:対談風景
市長
このたび「西宮市新病院基本構想」の素案をまとめました。
内田さんには、子育て世代を代表していろいろとご意見をいただきたいと思います。
内田
子育てするなか、病院や病気のことが話題になる機会も多いので、体験に基づいたお話ができればと思います。
さっそくですが、このたび策定された「基本構想」とはどのようなものなのでしょうか。
市長
中央病院は赤字経営が続き、市から多額の支援を行ってきました。
また、施設等の老朽化や耐震性の低さから、早急に対策が必要となっています。
そこで、外部の専門家からなる「移転整備等検討委員会」を設置し、今後の方向性について答申をいただきました。
「答申」では、赤字解消のための抜本的な改革と公立病院としての役割を果たすこと、移転整備をすることを強く求められました。
それを受け、市としての基本的な方針を定めたものが「基本構想」(素案)です。
内田
私たちの税金が病院の赤字補填に使われてきたということですね。
市長
救急や高度医療など不採算であっても市民に必要な医療は仕方ありませんが、それ以上に赤字を出して税金で補填し続けることは許されません。

必要とされる診療科目に特化 救急・がん診療などを充実

写真:西宮市PTA協議会会長・内田久恵さん
内田
市内には徒歩や自転車で通える範囲に多くの診療所があり恵まれていますね。
市長
診療所は、皆さんがまず診察していただく医療機関です。
その結果、より高度な治療が必要であれば病院へ紹介することになります。
市内には病院も多くありますので、他病院と同じ医療を提供して競合するのではなく、民間病院では不十分な分野の医療を補完することが公立病院の使命だと思います。
内田
私が以前住んでいたまちでは、総合病院へ行って、いろいろな診療科を回りました。
待ち時間は長かったですが、一度で済むという便利さはありました。
市長
医学の進歩により医療が高度化、細分化してきたため、国の方針も医療機関の機能分化と連携を強化し、地域で医療を完結するようになっています。
病院どうしで役割分担し、相互の連携をしっかり行いますので、ご理解をお願いいたします。
内田
それでは具体的に中央病院はどのような診療を行うのですか。
市長
新病院では、救急医療、がん診療、そして災害・広域的呼吸器感染症対策の3分野に重点的に取り組みます。
そのために必要な診療科である、内科、外科、整形外科、小児科、泌尿器科、放射線科、麻酔科に絞ることで、スタッフを手厚く効率的に配置し、急性期病院にふさわしい高度な医療を提供します。
内田
小児科では待合室に託児スペースがあると助かります。
市長
新病院にはそういう工夫も必要ですね。
内田
がん診療にも力を入れられるそうですが、私の知人は大阪の病院へお世話になり、ご家族の方も付き添いで通っておられ、大変だったようです。
市長
がんは2人に1人がかかる病気です。
その治療のために遠方の病院へ通わなければならない状態は改善しなければなりません。
中央病院は「兵庫県指定がん診療連携拠点病院」にも指定されており、今後も地域のがん診療に貢献していかなければなりません。
新病院ではスタッフの充実や設備の整備を行い、医療機能を高めます。看護師も、入院患者10人に1人の体制から7人に1人の体制にして手厚い看護を提供します。
また、災害時や新型インフルエンザ等の広域的呼吸器感染症対策にも力を入れていきます。
内田
民間病院では対応の難しい病気や災害の時に支えていただける病院があるのは心強いですね。
救急では、夜間に子どもが応急診療所を受診したことがありとても助かりました。
市長
市内の救急体制は、応急診療所をはじめ、軽症の1次救急から非常に高度な3次救急まで病院や診療所が役割分担しています。
しかし、医師確保が難しく小児の2次救急ができない日が生じたり、応急診療所の深夜対応ができていないなど、対策が急がれます。
地元医師会ともよく相談して充実させていきます。

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アサヒビール西宮工場跡地への移転を計画

写真:河野昌弘市長
内田
新病院の移転先候補を津門大塚町の現在のアサヒビール西宮工場にされたのですね。
市長
単なる耐震補強や現地での建て替えでは、老朽化の解消や交通の便などの経営環境の改善効果が薄いこともあり、移転することに決めました。
移転場所は、「答申」では、全市的な交通アクセスの良さ等から、西宮北口周辺の両度町、芦原町、津門大塚町の3カ所が候補とされ、中でも両度町が良いとされました。
市で詳細に検討する中で、両度町より津門大塚町が良いという結論になったのです。
内田
なぜ津門大塚町に決められたのですか。
市長
両度町、芦原町は、周囲を道路や住宅に囲まれており、建物の設計の制約が厳しく、将来の医療の進歩へ対応するために拡張することも困難です。
その点、津門大塚町は、敷地上の制約が少なく、災害時の応急医療にも対応しやすいのです。
また、地下駐車場を建設しなくてもよく、防災対策も容易です。交通の利便性も、津門大塚町なら、最寄り駅から徒歩で最短の場所に確保できる可能性があり、そうなれば歩行者用デッキ建設も可能です。

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病院経営に精通した事業管理者の設置

内田
病院経営の仕組みも大きく変えるとお聞きしていますが、どう変えるのですか。
市長
赤字経営の原因は、病院経営のことがよく分からない行政が経営してきたことにあると考えています。
そこで、経営や医療のことを良く分かった人に、事業管理者になっていただき、経営や人事などの権限をお渡しして、手腕を発揮していただきたいと考えています。
また、高度な医療を行い、診療報酬のアップにつなげることで収支改善を図ります。
同時に経費削減にも取り組みます。
人件費の割合が高く経営を圧迫している点も改善しなければなりません。
業績やスキルが職員の待遇に反映される制度も導入し、モチベーションアップにもつなげたいと考えています。
内田
医療は、あるのが当然と思ってきたので、私たちの税金が西宮の安心を支えていることを深く考えたことがありませんでした。
良い病院を作ってください。
応援しています。
市長
経営改革をやり遂げ、市民の皆さんに喜んでいただける病院になるよう頑張ります。

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