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西宮湯川記念事業

第30回 西宮湯川記念賞受賞者

更新日:
2017年1月25日
ID:
36498

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受賞について

【記念賞贈呈式年月日】
 平成27(2015)年11月23日(月・祝)
 ※西宮市制90周年 西宮湯川30周年記念事業「西宮と湯川博士と物理学」内で実施。


【受賞者】
 沙川 貴大(さがわ たかひろ)氏
  東京大学大学院工学系研究科 准教授
                  沙川貴大先生      
(受賞者写真の無断使用を禁じます)


【受賞研究】
 「情報熱力学の構築」

【受賞理由】
 熱が高温物質から低温物質へと自発的にかつ一方的に流れる等、我々が日常経験する多くの物理現象は、ある方向に進むことがあってもその逆に進むことはない。
 物理学ではこの事実は「熱力学第2法則」あるいは「エントロピー増大則」という法則として知られている。この法則に関して、古くから「マクスウェルの悪魔のパラドックス(逆説)」と呼ばれる問題が指摘されていた。これは、粒子の速度を選別し扉を開閉することのできる「悪魔」がいれば、低温物質から高温物質に熱を流すことができ、熱力学第2法則を破ることができるというパラドックスである。このパラドックスの根本原因は、「悪魔」が粒子の持つ速度を選別するという、系の「情報」を利用したフィードバック制御を行っていることにあり、「情報」の有するエントロピーが重要な役割を果たしていることが指摘されていた。しかし、過去の研究は個別の系に対する議論にとどまり、包括的な理論の構築までには至っていなかった。
 沙川貴大氏は、従来の熱力学と情報理論を融合することで「マクスウェルの悪魔のパラドックス」を解決しつつ、定量的な予言もあたえる新しい理論体系を構築した。また、系の状態が変化したときに取り出せる仕事量についてなりたつ一般的関係式である「ジャルジンスキー等式」に「情報」の効果を取り入れた、より一般性の高い関係式を導いた。これらの成果は、熱力学の枠組みの中に「情報」をどのように組みこんだらよいかの指針を示しており、「情報熱力学」という新しい学問体系を切り開くものである。さらに、沙川氏が計画に関与した実験で、コロイド粒子の位置に応じて電場を調節するフィードバック制御を行うことで、情報エントロピーに相当する余分の仕事を取り出せることが検証され、沙川氏の示した一般化ジャルジンスキー方程式が実験的にも確認された。沙川氏の情報熱力学の枠組みは、物理系のみならず生物系へも適用されるなど、今後の大きな広がりも期待される。
 このように、沙川氏の研究は、熱力学の基礎を与えるうえで重要であるだけでなく、非平衡現象一般を理解するうえでも重要な指針を与えるという画期的な研究である。周辺分野への波及効果は非常に大きく、高く評価される。
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