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西宮湯川記念事業

第13回 西宮湯川記念賞 草野 完也

更新日:
2017年1月25日
ID:
26591

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○受賞研究について
太陽表面に現れる黒点の近傍ではフレアと呼ばれる激しい爆発がしばしば発生することがあります。
この爆発は太陽黒点を作っている巨大な磁場のエネルギーが突然解放される現象です。
フレアが発生すると、太陽を取り巻く高温のプラズマ(コロナ)が1千万度以上に加熱されると共に、衝撃波を伴って大量に惑星間空間に放出されることがあります。
1991年に日本が打ち上げた太陽観測衛星「ようこう」は太陽フレアを宇宙からX線で詳しく観測し、太陽から宇宙空間へ延びる磁力線がつなぎ変わる結果としてフレアが発生することを明らかにしました。
しかし、なぜ太陽フレアが突発的に発生するのかは未だに明確に理解されていません。
13草野・図1この研究では磁場とプラズマの運動を説明する電磁流体力学方程式からフレアが発生する理由を説明したものです。
太陽のコロナでは磁場がプラズマの運動を支配していますが、電磁流体力学によれば磁力線の形状が捻じれるほど大きなエネルギーが磁場の中に蓄積されることが分かっています。
この研究は磁力線が一定以上捻じれるとプラズマにかかる力のつり合いを満たす状態が2つに分岐し、それまで安定であった状態が不安定になることを理論的に示したものです。
この研究により不安定化した状態が安定な状態に遷移するための自発的なエネルギー緩和現象として太陽フレアの発生を自然に理解するための理論的枠組みが示されました。
13草野・図2○プロフィール
1959年北海道室蘭市に生まれる。
1982年北海道大学理学部物理学科を卒業した後、広島大学大学院理学研究科にてプラズマ物理を学び、1987年核融合プラズマの電磁流体力学研究によって理学博士号を取得。
その後、広島大学理学部助手、同大学院先端物質科学研究科助教授、独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)地球シミュレータセンタープログラムディレクターを経て、2009年7月より名古屋大学太陽地球環境研究所総合解析部門教授に赴任し現在に至る。
JAMSTECシステム地球ラボユニットリーダー、明治大学研究知財戦略機構客員教授、明治大学GCOE「現象数理学の形成と発展」シミュレーション班リーダーなども兼務すると共に、次世代太陽観測衛星(Solar-C)計画にも参画している。
趣味は音楽と山歩き。
北海道の山をこよなく愛すが、仕事に追われて山に入る時間も取れなくなって久しい。
ホームページ:http://st4a.stelab.nagoya-u.ac.jp/kusano/


○近況
受賞時に在籍していた広島大学を2004年に離れ、独立行政法人海洋研究開発機構地球シミュレータセンターに異動しました。
当時、世界最速のスーパーコンピュータであった地球シミュレータを使い、太陽フレアのみならず地球環境や燃焼、物質の破壊などに関する幅広いシミュレーション研究を行いました。
その後、2009年に名古屋大学太陽地球環境研究所に異動し、現在に至っています。
太陽地球環境研究所は我々の生きる環境としての太陽と地球の関わりを総合的に探る全国共同研究施設です。
現在、私は受賞研究でもある太陽フレア発生の問題をさらに深く理解すると共に、フレア発生を予知するための研究を続けています。
フレア爆発が自発的なエネルギー解放であることが分かっても、それがいつ、どこで、どのように発生するのかはまだ良く分かっていないのです。
フレア爆発は人工衛星や宇宙飛行士、通信、電力網などに深刻な影響を与える場合があります。
それ故、フレア発生予知は科学的に興味深い研究であると共に、高度な情報通信機器に依存した現代社会を守るためにも必要な技術です。
さらに、地球シミュレータセンターで開始した研究を発展させ、太陽黒点活動が地球気候に与える影響を理解するための研究も進めています。

(2011年9月)

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