生涯学習

西宮湯川記念事業

第14回 西宮湯川記念賞 小形 正男

更新日:
2017年1月25日
ID:
26590

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○受賞研究について
固体中の電子に、少しでも電圧をかけますと電流としてサラサラ流れます。ところが実際には、電子同士の距離は短いですので、激しく強いクーロン斥力を感じながら運動しています。つまり電流はサラサラと流れるわけではなく、実際はドロドロと流れているわけです。さらに、ドロドロと流れている間は電流となりますが、ちょっとしたことで滞ったり、止まったりすることがあります。電子の流れが止まってしまうと絶縁体ということになります。
このように、お互いに強く相関しながら運動している電子系のことを「強相関電子系」と呼んでいます。ドロドロとした液体を物理的に記述するのは大変ですので、理論の方もなかなか一筋縄ではいきません。そのため簡単なモデルの計算とかコンピュータによる数値計算などがいろいろとなされています。

高温超伝導体もそのようなドロドロの強相関電子系で表わされると考えられています。実際、絶縁体になってしまうような状況のすぐ近くで高温超伝導という華々しい現象が起こります。私の研究は、そのような高温超伝導研究の初期に、1次元電子系という比較的扱いやすいモデルでの厳密な結果や、数値計算による信頼できる計算をすることができたということで、受賞させていただきました。
1次元系という少し特殊な状況での結果ですが、一般の2次元系、3次元系などの世界で起こっていることに対して、少しは理解のためのヒントにはなったかと思います。ただし、2次元3次元での強相関電子系の全貌は理論的にわかっていません。それは21世紀の課題であると言えると思います。


○プロフィール
経歴としては、東京大学理学部物理学科をはるか昔に出ました。その後、本郷の大学院、東大物性研、スイス・チューリヒ、アメリカ・プリンストン、駒場の物理学教室、と放浪したのち、本郷の理学部物理学科へ戻って来ました。結局東大は一周しました(世界も一周しました)。
やっぱり物理が趣味ですが、物理以外では地理が好きです。たとえばNHKの「ブラタモリ」的なものが面白い。また、最近は見ている時間がとんとなくなってしまいましたが、映画、たとえば蓮見重彦的なもの。スペインの大平原が好き。ほかにはコーヒーを飲むこと、ぶらぶら廊下を一周すること。血液型。


○近況
現在、東京大学の本郷の理学部物理学教室におります。引き続き高温超伝導などのメカニズムの解明につながるように、強く相互作用する電子系について理論的研究を続けています。
ただ高温超伝導ばかりではなく、それ以外のエキゾチックな超伝導体も続々と発見されてきていますので、それらについても従来の理論の枠組みを越えた新しい概念による超伝導体の理解を目指しています。

また、最近では固体中で実現する、(擬似)相対論的ディラック方程式を満たすような電子系に関する研究も行っています。
ディラック方程式は、通常の電子とその反粒子である陽電子を予言しましたが、それと同様のことが物質中で実現することが近年よくわかってきました。しかし物質中では簡単に電子と陽電子の対を真空から形成することが可能です。このため、まさにディラック方程式を満たすようなエキゾチックな電子系を実験室で実現して、いろいろな状況下での研究を行うことができます。このことを元に、固体中のディラック電子による新奇な物理現象を予言することを目指して、いろいろと挑戦しています。

(2012年1月)

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