生涯学習

西宮湯川記念事業

第23回 西宮湯川記念賞 笹本 智弘

更新日:
2017年1月25日
ID:
26585

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○受賞研究について
古典力学においては、 粒子の運動はニュートンの運動の法則によって記述され、 ある時点での粒子の位置と速度が与えられればその後の運動は完全に予言することができます。
物質は原子や分子が多数集まって出来ていますから、 もしその全ての粒子に関してある時点での位置と速度が与えられれば、 物質の性質も全て分かることになりそうですが、 物質には極めて多くの(10の24乗個程度の)粒子が含まれていますから、 これはあまり現実的な話ではありません。

一方で、 粒子が沢山あるからこそ成り立つ別の法則も多くあります。
理想気体に対するボイル・シャルルの法則などはその典型例で、 それらは熱力学や統計力学と呼ばれる理論にまとめられています。
現在のところこれらの理論の適用範囲はほぼ平衡系に限られており、 外界と物質やエネルギーのやりとりのある非平衡系には適用出来ません。
しかし我々自身を含め世の中には非平衡系が沢山あり、 その多様な性質を理解しようとする試みが世界中で続けられています。

私の研究では、 そのような非平衡系の本質のみを残したようなモデル系に着目し、 その対称性、 相構造、 普遍揺らぎ等の性質について詳細に明らかにしました。
これらは特殊な系に対する結果ではありますが、 非平衡系の普遍的な性質を探る上で重要な意義を持つものと期待されます。


○近況
界面成長の問題に関しては、 その後理論・実験両面において大きな進展がありました。
理論においては、 1986年に提出されたKPZ方程式と呼ばれる非線型偏確率微分方程式の解が初めて得られました[1]。
実験においては、 普遍的な揺らぎの分布関数が液晶乱流において綺麗に見出されました[2]。
現在はそのさらなる発展に力を入れて研究を行っています。

[1] T. Sasamoto and H. Spohn, Phys. Rev. Lett., 104 (230601) 2010
[2] K. A. Takeuchi and M. Sano, Phys. Rev. Lett., 104 (230602) 2010

(2011年9月)

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