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西宮湯川記念事業

第24回 西宮湯川記念賞受賞者

更新日:
2017年1月25日
ID:
26573

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平野哲文先生贈呈式年月日 2009年(平成21年)11月5日

〔受賞者〕
 平野 哲文(ひらの てつふみ)
  東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 講師

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  受賞研究  
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 「相対論的流体力学に基づくクォーク・グルーオン・プラズマの研究」

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  受賞理由  
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原子核を構成する陽子や中性子、その結合力を媒介する湯川中間子などはハドロンと総称されるが、これらはクォークやその反粒子などの素粒子からできている。量子色力学と呼ばれる素粒子の理論では、荷電粒子の相互作用が光子によって媒介されるように、クォークの相互作用はグルーオンと呼ばれる粒子によって媒介される。

クォークやグルーオンが単独で見つからないのは、クォークが3色、グルーオンが8色の色電荷を持ち、全体として白色の状態、即ちハドロンの中に閉じ込められているからだと考えられている。しかし、誕生したばかりの1兆度を超す超高温の初期宇宙では、ハドロンが溶解し、クォークやグルーオンが自由に動き回るプラズマ状態が存在していたと考えられている。

このプラズマの生成を目指して2000年から始まった相対論的重イオン衝突型加速器RHICを用いた米国ブルックヘブン国立研究所での実験では、約20兆電子ボルトという非常に高いエネルギーで原子核を正面衝突させ、何千という粒子が発生する複雑な現象を観測している。

平野哲文氏はこの実験結果と、自らが世界に先駆けて開発した相対論的流体模型の3次元数値シミュレーションによる理論結果を詳細に比較することで、高エネルギー原子核衝突で生成された超高温物質が、粘性が小さくサラサラした「完全流体」のように振舞うことを示した。

これは従来の予想を覆す結果であり「強結合のクォーク・グルーオン・プラズマ」が生成されていることを示す証拠として、最近の理論および実験研究に大きな影響を与えている。平野氏の理論的研究は、まもなく稼働を始める欧州合同素粒子原子核研究機構CERNの新しい加速器LHCを用いた、より高エネルギーでの原子核衝突実験とも密接に関連し、今後も益々の発展が期待されている。
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