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西宮湯川記念事業

第23回 西宮湯川記念賞受賞者

更新日:
2017年1月25日
ID:
26572

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笹本智弘先生2008年(平成20年)11月5日

〔受賞者〕
 笹本 智弘(ささもと ともひろ)
  千葉大学大学院理学研究科基盤理学専攻(数学・情報数理学) 准教授

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  受賞研究  
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 「非平衡定常系における確率的模型の厳密解」

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  受賞理由  
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氷と水は、摂氏ゼロ度を境として、同じ物質が全く違った状態として現れる相転移の典型例である。高速道路を走る車の数や平均速度がわずかに変化しただけで、渋滞が急に起こるような類の相転移も観察される。前者のように物質の流れがない場合(平衡系)の相転移は理論的な理解が進んでいるが、後者のように物質の流れがある場合(非平衡系)の相転移は取り扱いが非常に難しい。

笹本智弘氏は、一次元空間において多数の粒子が左右に移動しながら進む非対称単純排他過程と呼ばれる模型を解析し、非平衡系の相転移に関して数学的に厳密な結果を得ることに成功した。従来は、粒子が一方向にのみ動ける場合しか解が知られていなかったが、笹本氏は左右両方に動ける場合や二種類の粒子がある場合にも厳密解が求められることを示し、それを基に非平衡系がきわめて多彩な相転移を示すことを明らかにした。これらの結果が、これまでの手法の単なる拡張ではなく「q変形された直交多項式の理論」を適用することにより初めて得られたことは氏の独創性を表すものとして高く評価される。

二種類の粒子が動く問題においては、粒子の密度を変えると流れが相転移を起こすという従来の予想が、数値計算の限度をはるかに超える精度では正しくないという事実を厳密解を用いて明らかにし、相転移の意味について新たな問題を提起した。さらに、笹本氏は、一次元結晶成長などさまざまな問題に対して氏の方法を適用し、この分野における一つのパラダイムを確立した若手研究者として広範な影響を与え続けている。
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