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西宮湯川記念事業

第25回 西宮湯川記念賞受賞者

更新日:
2017年1月25日
ID:
4586

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小松英一郎 教授贈呈式年月日 2010年(平成22年)11月4日

〔受賞者〕
 小松英一郎 氏(こまつ えいいちろう)
  テキサス大学オースティン校天文学科教授

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  受賞研究  
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 「宇宙マイクロ波背景輻射を用いた初期宇宙理論の検証」
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  受賞理由  
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宇宙マイクロ波背景輻射は、宇宙の大きさが今の千分の一だったころに宇宙が放った光の名残で、我々が見ることのできる最遠の光である。これはあらゆる方向でほとんど一様に摂氏マイナス270度と観測される光で、50年以上にわたって宇宙論研究のマイルストーンであった。この残光の存在は、「進化し続ける宇宙」を示唆し、宇宙に始まりがあることを実証する。さらに、この残光に十万分の一の大きさの微かな皺が刻まれていることを1992年にCOBE衛星が発見した。この皺こそが、宇宙の中で進化してきた我々自身や星・銀河の種なのである。さらに探究を進めるため、2001年に観測装置をラグランジュ点L2に打ち上げ、この残光に刻まれた全天の皺を最高精度で走査し、宇宙の構造と歴史を詳細に紐解く壮大な計画がWMAPであった。
このWMAPがもたらした膨大なデータの混沌の中から、あらゆる物理学理論を駆使して有用な情報を抽出し、「宇宙の広がりと歴史」を初めて正確に記述したのが小松英一郎氏を中心とするWMAPの理論解析グループである。小松氏の研究グループは、宇宙の歴史がノイズに埋もれた膨大な残光の皺の中に、幾重にも折り重なったさざ波として刻まれていたことを発見し、これを注意深く抽出していった。そして我々が長年にわたって構築してきた宇宙理論モデルが基本的に正しかったことを検証し、それを精密化した。これは、宇宙が何からできているのか、我々をはじめ銀河や星がいつ何処から由来したのかといった基本的な問題の解決に本質的である。さらに宇宙のすべての構造の究極の源である量子揺らぎの詳細を明らかにし、極微から大きな宇宙が作られた宇宙初期の大加速膨張(インフレーション)の謎を解き明かしつつある。人類が数千年来議論し続けてきた宇宙論を、実証的な物理学として成熟させて確立した功績は計り知れない。
WMAPによる貴重な情報は、次に本質的となる問題「暗黒エネルギーや暗黒物質は何か」「宇宙構造の途方もなく大きな活動性の起源は何か」などに対して、間違いなく決定的な役割を果たすだろう。実際、初期宇宙の研究者、銀河の研究者、素粒子の研究者、暗黒物質の研究者、など宇宙に関わるあらゆる研究者にとって、小松氏らによってもたらされた「宇宙の広がりと歴史」は至宝である。今、WMAPを越えて宇宙のより基本的な研究が爆発的に進みつつある。
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